呼吸の生理学

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8.血液による酸素運搬

 肺胞から血漿中に溶けた酸素は赤血球の中に拡散し、ヘモグロビン(hemoglobin)と結合する。酸素と結合したヘモグロビンを酸素化(オキシ)ヘモグロビン(oxyhemoglobin)といい、酸素と結合していないヘモグロビンを脱酸素化(デオキシ)ヘモグロビン(deoxyhemoglobin)という。健康人では血液100mlに約15gのヘモグロビンが含まれており、動脈血中ではそのほとんどが酸素と結合しており、血液100mlあたり標準状態(0℃、1気圧)で 20mlの酸素が赤血球に化学的(chemical)に溶解している。一方、ヘンリーの法則にしたがい、血液100mlに物理的(physical)に溶解している酸素の量は0.3mlに過ぎない。また、酸素化ヘモグロビンは赤く、脱酸素化ヘモグロビンは青い。そのため皮膚表面からでも静脈は青っぽく見える。一般に血中のヘモグロビン量の1/3が脱酸素化ヘモグロビンになると、組織が肉眼的に暗青色に変色して見える。これをチアノーゼ(cyanosis)という。

 血液を様々な酸素分圧(PO2)の空気と接触させ十分平衡に達した場合に、血液中の全ヘモグロビンの何%が酸素と結合しているか(酸素飽和度)を調べるとS字型の曲線が得られる。これをヘモグロビンの酸素解離曲線(oxygen dissociation curve of hemoglobin)という。肺胞内のPO2は100mmHgであるので動脈血のヘモグロビンの酸素飽和度はほぼ100%であることがわかる。一方、混合静脈血中のPO2は40mmHgでヘモグロビンの酸素飽和度は70%である。したがって、ヘモグロビン1g当たり1.34mlの酸素が結合するので、血液100ml中にヘモグロビンが15g含まれているとすると、動脈血100mlあたりの酸素含有量は20ml、混合静脈血中には14mlとなり、その差 6 ml が組織に移動した酸素量である。PO2が40 mmHg 以下では急激にヘモグロビンの酸素飽和度が減少する、いわゆる S 字カーブの意味するところは、もし組織の酸素消費量が亢進して組織のPO2が40 mmHgが低下すると血液から大量の酸素が供給され組織の酸素分圧低下防止に働くことである。