運動生理学の測定方法の原理とデータ解釈(持久力)

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9.嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)とは

 ATは「増加する運動強度において有機的エネルギー産生に無機的代謝によるエネルギー産生が加わる直前の運動強度(Wasserman,1985)」で,無酸素性作業閾値とも言われます.運動強度が高くなると,心拍数はほぼ運動強度に応じて上昇するのに対し,血中乳酸濃度はある程度まではほとんど上昇せず,ある運動強度を越えると急激に上昇します.これは筋肉の中が酸素不足になり,エネルギー供給の過程でグリコーゲンが無酸素的に分解され,生成された乳酸が血中に流れ出たことを表しています.これに対応して,体内の重炭酸が動員されて酸性になった血液を中和するために呼気中の二酸化炭素が急激に増加し,呼吸も早く,大きくなります.

 このように,運動中,徐々に運動強度を増やしていった時,急激に血中乳酸が増え始めたり,呼気中の炭酸ガス濃度が増え始める運動強度をATと呼んでいます.正確には乳酸性閾値(lactate threshold: LT)あるいは換気性閾値(ventilatory threshold:VT)と呼ぶ方が良いでしょう.

 AT以下の強度で行われる運動は,主に有酸素性機構によりエネルギーが供給され,運動にともなう危険度も低く,エネルギー源として炭水化物とともに脂肪が使われることから健康づくりや生活習慣病の予防・治療にふさわしい運動として推奨されています.しかし,競技スポーツにおいては,AT以上もしくはATと同等の運動強度を,競技力を高めるトレーニング強度として多用しています.