持久性トレーニング(2)

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10.運動処方2.運動の強度-1

 最近の生活習慣病予防を目的とした介入研究では,日々の活動量(エネルギー消費)を増加させることが中心で,に示した運動量,つまり運動の強度×持続時間がエネルギー消費の決め手です.ACSMの運動処方の指針では,心肺系持久力の増加は,低い強度の長時間運動でも,高い強度の短時間の運動と同様の効果が得られるとしています.

1.METsによる強度設定
従来,運動強度の最良の指標は酸素摂取量(VO2)とされ,運動強度(METs,またはml/kg/min)の範囲は,最大酸素摂取量(VO2max)の何%という考え方が用いられています.実測VO2maxが10METsなら処方する強度はその60〜80%に当たる6〜8METsとなりますが,最近のACSMは%VO2Rの何%という表現をするようになっています.VO2Rに基づいて目標VO2を決めるには,次の式が用いられています.

目標VO2=(目標至適強度)(VO2max−安静時VO2)+安静時VO2

 この式は,HRRから目標至適心拍数を求める式にも該当します(下記).この式で,安静時VO2は3.5ml/kg/min(1MET)であり,50〜85%(ディコンディショニングの状態の者では40%ぐらいの場合もある)が目標至適強度(%表示)の範囲です.

 VO2(MET)レベルが設定されると,既存の各種運動のMET一覧表から運動強度に該当する運動種目がわかります.

2.心拍数による強度設定
 運動強度の設定に心拍数が用いられるのは,HRと%VO2maxとの間に一応の直線関係があるからです.可能なら,漸増運動負荷テストによってHRmaxを求めます.と言うのは,年齢によって,HRmaxは低下し(HRmax=220一年齢),個人差が比較的大きい(1SD=10〜20拍/分)からです.

  1. 直接法
     漸増運動テスト中同時測定したVO2とプロットする方法です.HR-VO2関係を強度の指標となりうるRPEも含めて評価します.RPEは,心疾患,肺疾患があってフィットネスレベルが低い者や運動中のHR変化に影響を及ぼすβ-遮断薬のような薬剤を服用している者の運動強度の設定に有用とされています.

  2. %HRmax
     至適目標HR幅を求める昔からの方法が,HRmaxの70〜85%強度おおよその目安とする方法です.この範囲はVO2maxの55〜75%に該当し,一般的にはVO2maxの改善や維持に適当な強度と言え,例えば対象者のHRmaxが180拍/分なら至適目標心拍数は126〜153拍/分と簡単に計算できます.
  3. HRRによる方法
     Karvonen法として知られています.この方法では,HRmaxから安静時HRを引いて,そこからHRRを求めます.例えば,HRRは180−60=120拍/分のようになります.さらに60%から80%のHRRの目標至適HRを求めるには,安静時のHRを加えます.

    目標至適HR=[((HRmax一安静時HR)×0.60〜0.80(%)]+安静時HR

 前述のHRmaxが180拍/分,安静時HR 70拍/分の例では, HRR法によると132〜156抽/分となり,%HRmax法から計算したものとほぼ同じです.HRR法の60〜80%は,フィットネスレベルが高い例ではVO2maxの60〜80%にあたり,%VO2Rとの間ではより幅広いフィットネスレベルの例で合致するとされています(ACSM).は,%HRmax,HRR法による目標至適運動強度の比較です.心拍数による2つの方法に差がみられるのは,%HRmax法は55〜75%VO2を示しており,%HRR法は60〜80%VO2Rの値を示しているからで,いずれの方法でも,フィトネスの改善や維持に十分に効果のある運動強度です..

3.自覚的運動強度による強度設定 
 
一般に用いられているRPEスケールはボルグスケール(下表)です.RPEは心拍モニターの補助的手段とされています.漸増運動負荷中のRPEは運動強度と常に一致するわけではなく,運動負荷の種類(トレッドミル vs エルゴメーターなど)が異なると強度が同じでもRPEが異なるからです.それでも次のような場合RPEは運動処方に有用です.HR測定が困難な場合,服用している薬物を変更して運動に対するHRの反応に変化が起こった場合などです.

  運動に対して生理的な適応を生じうるRPEの平均的範囲は,Borgのスケールの12〜16とされています.しかし,個人々々によって心理的・生理的関連がさまざまなので,RPEは個人々々が決まった種類の運動をする時に応用すべきもの,%HRmaxや%HRRとよく一致すると期待せず,あくまでも運動強度設定の1つのガイドラインとして用いるべきものとされています(ACSM).

表1 BorgのRPEスケール(Original Scale)