ジェンダーとセクシュアリティ

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1.セクシュアリティとは

 セクシュアリティとは、以下のように定義されています。

■ 「性にかかわる欲望と観念の集合・・・自然と本能ではなく、文化と歴史に帰属する」
  (女性学事典,岩波書店,2002)

■ 「セックスは両脚の間(性器)に、セクシュアリティは両耳の間(大脳)にある」
  (カルデローン,アメリカ性情報・教育協議会創設者)

 もう少し具体的にみると、アメリカ心理学会の見解では、「セクシュアリティの構成要素」が以下の4つにまとめられています。

  1. 性的指向(sexual orientation)
  2. 生物学的性(biological sex)
  3. 性自認(gender identity)
  4. 社会的性役割(gender role)

1. 性的指向 : ある特定の性(gender)を持つ人に対する持続的な魅力(例えば、情緒的魅力、恋愛対象としての魅力、性的魅力、情愛を注ぐ対象としての魅力)

  • 同性に対して魅力を抱く同性愛(ゲイ(男性・女性の同性愛者両方を指す))
  • 異性に対して魅力を抱く異性愛(ヘテロ)
  • 異性・同性のどちらにも魅力を抱く両性愛(バイセクシュアル)

これらに加え、異性と同性の両方ともに魅力を抱かない「Aセクシュアル」という立場もあります。

2. 生物学的性 : 性器の男女差
 セクシュアリティを構成するものとして、生物的な性も含みます。
 しかし、これらも男女の二分法だけで考えていてはいけません。

Cf. インターセクシュアル(半陰陽、ふたなり)
生物学的に男性と女性の特性を持ち、解剖学的に男女の区別の判断ができない中間性を有する状態、あるいはそのような人のこと。最も典型的な例は、卵巣と精巣の両方をもつ「真性半陰陽」。出生時や幼少時に、本人の同意なく性器形成手術が行われていることが多いようです。 

(参考)
半陰陽の子供達とその家族のセルフヘルプグループ
http://home3.highway.ne.jp/~pesfis/

3. 性自認(gender identity)
 「性自認」とは、私が男性である、あるいは女性であるという自己意識のことです。戸籍上の性、養育上の性、身体の性、社会的性役割が一致していると認識されている状態に比して、性別違和感を持つ人もいます。

 この性別違和感をひとつの疾患単位としたのが、「性同一性障害(gender identity disorder)」という概念です。性同一性障害とは、「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性別に属しているかをはっきり認識していながら、その反面で、人格的には自分は別の性に属していると確信している状態」を指します。つまり、身体の性別と心の性別が引き裂かれている状況です。そのなかでも、身体とこころの性別に対して強い不一致を感じており、形成外科的な手術で身体の性を変更したい人のことを「トランスセクシュアル(TS)」と呼びます。

 一方、「トランス・ジェンダー(TG)」とは、身体の変更を必要としないで、異性装などの手段で社会的な性別を反対の性で生きる人のことです。性別違和感に強く苦しまず、自己表現の手段として男装・女装を選ぶ人も含まれます。異性装は、反対の性で生きることを象徴するため、強くジェンダーに規定された衣装になることが多くなります。たとえば、男性が女装する場合、「女らしさ」を象徴するために長い髪でスカートといった装いになったり、女性が男装する場合、髪を刈り上げたり、タバコをふかしたりといった装いになることがあります。

(参考)
TSとTGを支える人々の会 
http://www.tnjapan.com/home.htm

4. 社会的性役割(gender role)
 社会的に規定された性役割や身体理解などの文化によってつくられた性差を指します。語源は名詞を性別化する文法的な分類にさかのぼりますが、現在ジェンダーは、男女の生物学的な二分法であるセックスと峻別して用いられています。

 1950年代以降のフェミニズムより、ジェンダーはセックスを前提とした文化的性別であるとされてきました。しかし、80年代以降、ポスト構造主義フェミニズムやクィア理論から、異性愛主義の差別性、性同一性障害のケアなどが指摘され、また生殖医療技術の進歩にも伴い、男性性と女性性の対立に偏りがちなジェンダー概念への問い直しが始まっているところです。

 関連用語であるジェンダー・バイアス(gender bias)とは、ジェンダーに基づく偏見のことです。また、ジェンダー・フリー(gender free)とは、ジェンダーに基づく心理的・制度的障壁からの解放を意味し、日本でも男女共同参画政策の標語として普及しました。しかし、性別の解体や性差を尊重しない主張として誤用されている場合も少なくないので注意が必要になります。