神経の可塑性(2)

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1.脳やシナプスの可塑性とは

 脳やシナプスの可塑性とは,様々ある入力に対して脳やシナプスが変化する性質である.脳には可塑性があるが,コンピューターにはない.この点は,コンピューターの回路と神経細胞どおしの連結によって作られる神経回路を比較してみると,容易に理解できる(図1参照). コンピューターの回路は綿密な設計図によって作られる.その設計図に従ってひとたび作られたコンピューターでは,どのような使われ方をされようと,回路の連結が変化することはない.一方,神経回路は,まず遺伝子情報に基づいて形成される.コンピューターと違うのは,脳や神経細胞が育つ過程,あるいは十分成熟した後でも,この神経回路が変化するのである.変化させる要因は,脳や神経細胞,あるいはシナプスへの入力である.脳への入力は,外界からのヒト個体への様々な刺激が感覚入力,つまり,視覚や聴覚,味覚,触覚,痛覚として脳に伝えられる.もう少し正確に述べると,脳の中の神経細胞のシナプスに伝えられるのである.これらの入力は受動的な環境からの刺激ばかりでなく,個体が発する運動や行動に対するフィードバックとしてももたらされる.また,シナプスへの刺激は外界からばかりでなく,思考や感情などの脳内活動によってももたらされる.可塑性によってもたらされる神経回路の変化とは,シナプスでの伝達効率の変化,シナプス結合の変化(シナプス結合が生じたり,増加したり,減少したり,消滅したり)である.

脳の可塑性の概念-コンピューターとの比較

図1. 脳の可塑性の概念-コンピューターとの比較