神経の可塑性(2)

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6.記憶の維持と固定化

 LTPは1時間以上持続するのだが,比較的短時間で減弱する場合と,ほとんど減弱しなくて半永久的に維持される場合がある.後者の場合には,LTP成立に引き続いて,LTPが長時間維持されるような固定のプロセスが働いていると考えられている.LTP成立のメカニズムの概略は前述したが,主としてすでに存在しているタンパク質の修飾反応による.さらにLTPの維持,固定がおこる為には,新たなタンパク質合成のプロセスが必要である.シナプス後部にはあらかじめ ある種のmRNA が配備されており,シナプスからの入力情報に依存して,シナプス後部で局所的なタンパク質合成が起こるシステムがある (図5図6).これにより,シナプス情報に応じて迅速なタンパク質の供給が可能となる.また,供給ばかりでなく,シナプス情報に応じた迅速なタンパク質の分解の仕組みもシナプス後部には備わっていると考えられている (図6).さらに,シナプス情報は神経細胞体にまで伝達され,そこで転写(mRNAを作り出す)の変化を誘導して,タンパク合成を変化させる.それによりシナプス後部へのタンパク質供給が変化する.これらの仕組みにより,シナプス後部のタンパク動態が大きく変化し,受容体の数,チャンネルの数などが変化する可能性,あるいはシナプス結合までもが変化することが示唆されている.シナプス結合の変化とは,シナプスの新生,分裂による増加および,消滅である.

セントラルドグマ:シナプス可塑性がおきる場合

図5. セントラルドグマ:シナプス可塑性がおきる場合

シナプス後部でのタンパク質の合成系と分解系

図6. シナプス後部でのタンパク質の合成系と分解系