運動時の水、電解質代謝

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4.発汗と水、電解質代謝

1) 汗の生成機序とその組成

 発汗は視床下部の体温調節中枢が体温の上昇を感知して、遠心性にコリン作動性交感神経を介して全身性に行われる。汗腺は皮膚組織に存在する球状の分泌部と、それと皮膚表面を結ぶ導管部よりなる。汗の分泌機序としては、まず、分泌部の腺細胞の腺腔部にNaイオンが能動輸送され、次にClイオンが受動的に流入する。その結果、腺腔部と腺外部に浸透圧勾配が発生し、それに基づいて水が流入する。したがって、分泌部における「汗の原液」は腺外部の体液と浸透圧が等しい、いわゆる等張性である。次に、それが導管部を通過するうちにNaおよびCl イオンが再吸収されるが水の再吸収はないために、最終的には汗は、血清より低張となって分泌される。したがって、汗の分泌速度が上昇し、導管部でのイオンの再吸収がおいつかないと、汗のNaCl濃度は血清の電解質濃度に近づく。一方、冬よりも夏の汗の方がNaCl濃度が低く、また暑さに順化するほどその低下程度は大きい。これは導管部でのNaCl の再吸収が亢進したためと考えられるが、その機序についてアルドステロンが関与することが報告されている。

 汗の基本的な成分は、電解質濃度は0.4〜0.8%で、血清の0.9% に比べて低張で、その主な成分はNaCl、尿素および乳酸である。汗の中の乳酸濃度は血清に比べて極めて高い。これは汗腺機能がブドウ糖をエネルギー源とし、その代謝物質の乳酸が汗に直接分泌されているからである。

2) 発汗量の体液区分への影響

  発汗量は、気温、湿度などの環境条件と運動時の産熱量に依存する。さらに、発汗能力には個人差が大きく、また暑熱の順化度によっても異なるが、その大まかな値を表4-1に示した。発汗による血漿量の減少は他の体組織の毛細血管領域において血管内圧の低下と膠質浸透圧の上昇を引き起こしスターリング力によって組織間液を血管内へ引き込む。さらに、低張性の汗を分泌することで体液の浸透圧が上昇し、それは細胞内から細胞外へ水を引き出し、細胞外液、血漿量の維持に働く。

 ヒトに温熱脱水を負荷したときの各体液区分の変化を脱水レベル別に示したものでは、比較的脱水レベルが低い場合には細胞外スペースからの体液喪失割合が大きく、脱水レベルが高くなると細胞内液の喪失割合が増加する。一方、血漿からの喪失量は脱水レベルにかかわらず、脱水量のほぼ10% に調節されている。

 図4-2はラットに体重の10% に相当する温熱脱水を負荷した時の体全体での体液区分変化と臓器別の体液区分変化を示す。ラットに温熱負荷を加えると唾液を体に塗布することで体温調節を行う。この唾液と汗の塩分組成が似かよっているため、ヒトの脱水時の体液区分変化のモデルと成りうる。その結果、脱水時に最も体液が減少するのは骨格筋と皮膚であり、筋肉は細胞内外の両スペースから、皮膚は主として細胞外スペースから体液の喪失が起きる。すなわち、これらは脱水時に血漿量の減少を防止するための有用な水分貯蔵器官として働く。

表4-1 発汗の大まかな指標

図4-2 脱水時の体全体での体液区分と臓器別体液区分変化