骨代謝

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2.骨量の増加と減少

  骨の発育過程において骨の長軸方向、骨の外径、髄腔径、皮質骨の厚さなどが変化する。これをモデリングと呼ぶ。ヒトの出生前後における骨長軸の成長についてみると、新生時期から乳児期にかけて最も発育し、それ以後、発育速度は一旦緩やかになるが、思春期になると再び発育速度は亢進し、その後は漸減しやがて発育は停止する。骨の長軸成長は、骨端部に柱状に整列した軟骨細胞が分化と増殖を繰り返すことによって、軟骨柱の高さが増すことによる。同時に、骨幹端部から軟骨細胞の石灰化(骨化)が進行する。石灰化速度が軟骨柱の伸長速度を上回り、すべての軟骨細胞が石灰化されると骨の長軸成長は終了する。これを骨端閉鎖と呼ぶ。

  一方、発育期の骨幹部における横軸方向の成長は、骨膜での膜性骨形成と、骨内膜下での骨吸収によって行われる。この際、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨内膜化での骨吸収のバランスがほぼ一定に保たれ、皮質骨の厚さは大きな変化を生じないまま径全体が増大する。

図2. テニスプレーヤー(B)とそうでない女性(A)のとう骨の骨密度の加齢変化
(Lamb DR, Exercise in Older Adults, Cooper Publishings, p205,1995.)

 骨は一度作られると一生そのままいうわけではなく、まず、古い既存の破骨細胞によって吸収され、次に骨芽細胞によって新しい骨が形成される。このように、骨代謝は骨吸収と骨形成がお互いにバランスをとるように続いているが、成長が完了した個体で骨量、形態が不変のまま行われるのをリモデリングと呼ぶ。

  老化等による骨量の減少は、皮質骨より海綿骨が優先して生じる。まず、重力負荷の加わらない横方向の海綿骨の骨量がなくなり、骨梁間の構造的連絡がなくなる。また、皮質骨量の減少は、外層での骨形成は一生を通じて行われるが、その速度より皮質骨の内層での骨吸収速度が上回るために起きる。

  骨成長と退行は、次の3つの影響を受ける。

1) 加齢と閉経

 思春期までは身長体重の伸びと共に骨量が増加する。その増加は20歳前後まで続き、その後はその骨量を初老期まで維持する。しかし、女性では閉経時のエストロゲンの急激な低下に伴って骨量も減少し、例えば、閉経後20年間に骨量が20〜30%減少する。これは、骨形成、骨吸収が共に亢進する高回転型であるが、骨形成に比べ骨吸収が高いために起き、また、海綿骨の骨梁幅ではなく骨梁数の減少が起きることが特徴的である。また、男性、女性を問わず、60歳以降には退行性の骨量減少がおきる。これは、骨芽細胞の機能低下に加え、消化管におけるビタミンDの吸収量の低下によってカルシウムの吸収が減少し、血漿カルシウム濃度が低下し、そのため副甲状腺ホルモンの分泌が亢進して骨吸収が亢進することによる。いずれも骨粗鬆症とよばれ、高齢者の腰痛や骨折の原因となる。

2) 液性因子

  発育期の骨の長軸成長には、下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが関与する。このホルモンは、軟骨細胞に分化する前の未分化前駆軟骨細胞に直接作用し、これを増殖させるとともに、肝臓でのインシュリン様成長因子の合成を促し、これを介して間接的にも軟骨細胞の増殖を刺激する。

  生体が正常な機能を営むために、血清Ca 2+濃度は8.5-10.2 mg/ dl という狭い範囲に、Ca調節ホルモンによって維持されている。副甲状腺ホルモン(PTH)は、破骨細胞を刺激し、骨吸収を促進することで、血清中のCa2+ 濃度を上昇させる。逆に、カルシトニン(CT)は、破骨細胞を抑制し、骨吸収を減少させる。低カルシウム血症はPTH分泌を促進し、高カルシウム血症はCT分泌を誘導する。

  ビタミンDは、肝臓および腎臓で活性化され、それは骨吸収を促進する一方、胃、腸管においてCaの吸収を促進し、腎の尿細管においてはCaの再吸収、リンの排泄を促進する。さらに、骨芽細胞に直接作用し、その増殖、骨基質合成を促進する。

  エストロゲンは、骨芽細胞の機能促進、破骨細胞の分化、増殖の抑制が知られており、閉経後や若い女性でも過度のスポーツによる血中エストロゲン濃度の低下は、それぞれの骨粗鬆症や疲労骨折の原因となる。

3) 力学的ストレス

  19世紀からWolff の法則として「骨格の形状や内部構造は骨格に伝達される荷重や歪みの影響を強く受けて機能的に適応している」ことが知られている。骨に加わる力学的ストレスによって電位を生じ、それが骨形成、骨吸収に影響を与えると報告されてきたが、最近、骨細胞自体に圧感受性があることが報告されている。